経営の分野では、
次々と新たな考え方やシステムが流行しますが、
医療を含めた全経営者の間で、
今クローズアップされている
仕組みに「ティール型組織」があります。

ティール型組織が評判になったのは
どうやらオランダらしいです。

しかし、医療や介護を含めた、多くの業界で
日本でも少しずつ話題を集めているところです。

自由診療やアンチエイジング診療を
標榜している医療機関においても、
ティール型組織を研究して損はないかと
思います。

今回はティール型組織について、
ご紹介します。

ティール型組織の概要と、その仕組み

ティール型組織とは、
シンプルに表現するなら

「代表者・経営者や幹部・上司が
指示を細かく出さなくても、
うまく機能し、
目的に向けて活発に動いていける組織」

と、なります。

ところで、
ティール型組織は、
既存の組織の骨組みに対する
アンチテーゼとして提唱された概念ですが、
この理論では従来の組織を
以下のように分類しています。

組織を5タイプに分類すると? 

レッド(Red)型組織

一個人の支配で動く組織のことを指します。

構成員はすべて、その支配者に従属し
依存している組織です。

アンバー(Amber)型組織

軍隊のような、
階級構造が明確な組織のことを指します。

指揮命令系統が厳格で、
構成員は与えられた役割を確実にこなすことが
要求される組織です

レッド型組織やアンバー型組織は、
支配体制が強固な分、
状況の急激な変化が生じると、
対応が遅れてしまうという弱点があります。

オレンジ(Orange)型組織

階級は明確なものの、
比較的昇進や
下克上のチャンスがある組織のことを指します。

ただし競争が熾烈で構成員を消耗させる
という弱点をはらみます。

オレンジ型組織は、
オーソドックスな企業社会があてはまりそうです。

グリーン(Green)型組織

階級格差は残るが、
構成員の個性や多様性が尊重される組織のことを
指します。

ただし代表者の権限は残っている特徴があります。

ティール(Teal)型組織

構成員の間に固定された
役割や階級が存在しない組織のことを指します。

上からの指示に代わって、
個々の構成員全体が相互に信頼し合い、
組織の意思決定と実行を繰り返しつつ
成長を続ける特徴があります。

ティール型組織の3大特徴

ティール型組織の共通点は、
以下の3要素を備えている点です。

セルフマネジメント(自主経営)

個々の構成員が上からの指示の代わりに
自己の意思決定を通じて
成果を出していきます。

このセルフマネジメントが成立するには、
組織内で各構成員にそれなりの権限を
与える必要があります。

ホールネス(全体性)

構成員の個性を尊重し
ありのままに受け入れることを、
そしてセルフマネジメントが
促進されることを目指します。

役割の固定がないため、
構成員はその役割に縛られません。

これが、
構成員の能力が妨げられずに発揮される
きっかけとなります。

ティール型組織の実現に向けて

サブスクリプションは
あらゆる業界で導入が進められていて
一種のブームになりつつありますが、
良いことばかりではありません。

海外における、ティール型組織の成功例

オランダには
「ビュートゾルフ」というティール型組織が
存在するようです。

設立から10数年で
1万名を超える所属者と
7万名を超える利用者を擁する
巨大組織に成長しました。

看護師10名程度のチームで、
50名前後の患者の世話をする
という体制をとっているのですが、
明確なボスやリーダーは存在しません。

しかし、
看護師同士が協力して
ケアサービスの内容・方向性を決定することで
満足度の高い医療・介護サービスの
提供に成功しているのです。

日本での取り組みに関して

もちろん日本の医療機関で
ティール型組織を模倣しようと思っても
すぐには上手くいかない可能性があります。

ビュートゾルフでは、
人事や財務といったケアサービス以外の面でも
看護師たちに権限と責任が
付与されていようですが、
このようなことを忠実に踏襲しても
破綻してしまう恐れがあります。

各地の開業医が注目すべき点は

「院内の教育や人事において
ティール型組織の理論がどう役立つか?」

ということだと思いませんか?

例えば、
院内の指揮系統がきちんと確立していることは
悪いことではありません。

とはいえ、
やりすぎると悪しき面も出てくる可能性が
あります。

「常に、上司の顔色を窺っている」
「細かく指示を受けないと何もできない」

このようなスタッフが生まれるのは、
組織内の支配体制が厳格すぎる場合に
多いようです。

ティール型組織の概念は
うまく取り入れれば

「業務にモチベーションを感じ、
主体的に行動する」

「業務に強い責任感を持って取り組む」

このような姿勢がスタッフの間に浸透する
はずです。

院内の業務も多岐にわたりますが、
一部の業務をティール型組織にならって
スタッフ全員の裁量にゆだねて、
どんな結果になるか
観察してみることも良いと思います。

もちろん、
院長としては随時チェックして
意見等を述べる必要はありますが、
スタッフたちは
普段とはだいぶ異なる心境で
取り組めるはずです。

まとめ

ティール型組織は、
オランダの看護・介護サービスを
根底から変えました。

組織の構成員を
既存の階級システムから解放し、
業務に関する責任と権限を
持たせたことがその原動力でした。

日本のアンチエイジング診療を
標榜する医療機関にとっても、
そこから学べるヒントはあるはずです。

従来の人事・教育体制にもいい点はあるため、
適度に導入対象を絞って
試していくことが大切と言えるでしょう。