医師にとって
「開業」という選択肢は
珍しいものではないでしょう。
一生を勤務医として
終えるケースが目立つとはいえ、
開業には収入面をはじめ、
捨てがたいメリットがありますね。
もっとも医師の大半にとって
開業は並大抵のことではありません。
資金等の準備といったハードルが
いくつもあります。
このため、経営コンサルタント等と
接しても、経営の必須知識が足りないために
説明を理解できないことがあります。
そこで今回は、
すべての開業医が知って損はない、
人気の経営理論
「ランチェスター戦略」を
テーマに取り上げました。
ランチェスター戦略とは?
ランチェスター戦略の歴史は古く、
今から100年以上前の第一次世界大戦のころに
考案されたと伝えられています。
当初は、戦闘の結末を探るために
提案されたものでした。
この戦略は
「第一の法則」と
「第二の法則」に分かれています。
第一の法則
これは、
シンプルな1対1の
接近戦(限定戦)に該当します。
戦闘力=「武器の効率」×「兵力数」
第二の法則
これは、
現代的な兵器を用いた
戦闘に該当します。
したがって1対1ではなく、
遠隔操作できるような
進んだ武器を
用いたケースとなります。
戦闘力=「武器の効率」×「兵力数」×「兵力数」
兵力数を2乗して計算する点が特徴的。
現代的ではない武器、
たとえば刀や剣を使う戦闘よりも
兵力数の影響がずっと強くなる、
というわけです。
ところで
これらの法則は、
経営学にそっくりそのままあてはまることが
明らかになっています。
経営への適用方法
経営学における
ランチェスター戦略の法則は、
大企業と中小企業の関係に
しばしば適用されてきました。
よく知られているように、
日本の企業社会は
99%がいまだに中小企業です。
これらのおびただしい数に上る
中小企業にとって、
ヒントを与えてくれるのは
「第一の法則」となります。
中小企業が大企業と
勝負する羽目になったとき、
「第二の法則」に支配される状況では
到底歯が立ちません。
なぜなら、
「兵力数」がものをいいますから。
しかし
「第一の法則」の下であれば、
「武器の効率」を向上させることで
何とか対抗できるようになるはずです。
では、中小企業は具体的に
どのような戦法を
取ったら望ましいでしょうか?
下記に戦法の例をご案内いたします。
あえて、限定されたマーケットを狙う
これは大企業に対して
「限定戦」を仕掛ける意味で効果的です。
広大なマーケットでは、
大企業が資本力や豊富な人材を活用して
商売を展開するため、
中小企業には不利となります。
ターゲットとなる客層を絞り込む
できれば、
あらゆる消費者層に売れる商品・サービスを
提供したいところですが、
それを目指そうとすると
大企業には太刀打ちできません。
しかし
ニッチなマーケットでは
競争相手も自然と少なくなるのです。
また、
客層のほか、
地域で絞り込んで、
それをターゲットとするのも良いでしょう。
自社がナンバーワンになれる要素を手に入れる
きわめてニッチな商材・サービスでの
ナンバーワンでもかまいませんし、
きわめて限られた地域での
ナンバーワンでもかまいません、
とにかく
自社が圧倒的なセールスポイントを持てれば、
それは「武器の効率の向上」を
意味します。
戦力を集中させる場所を慎重に選ぶ
大企業と比べて
不利な条件が多い中小企業にとって、
限りある戦力は効果的に使う必要があります。
このため、
アタックする場所は1ヶ所に決めるべき。
そこを徹底的に攻撃して
成果を確保するべきなのです。
医院経営に適用するチャンス
医療機関は企業ではありませんが、
営利団体であるという点では変わりません。
開業医にも、
ランチェスター戦略を応用するチャンスは
数多いですね。
たとえば
現在は自由診療が
徐々に社会に浸透しています。
近所に突如として、
似たような診療サービスを
謳い文句にする開業医が出てくるかもしれません。
したがって、
売上が安定している場合でも
可能な範囲で、
ランチェスター戦略にもとづいた経営戦術を
ときどき検討するに越したことはありません。
※自院の置かれた状況や
周囲の医療機関の状況を
冷静にチェックする機会を
定期的に持つことは、
長い目で見たら有益でしょう。
ランチェスター戦略は応用が利く理論です
ランチェスター戦略は、
経営を学ぶ場では度々耳にする用語です。
「ランチェスター戦略」と聞くと
「難しそうだな…。」
と感じる方もいるかと思いますが、
比較的、
初心者でも理解しやすい用語です。
開業医にとっても有益な理論ですし、
お時間がある際に
研究・実践してみてはいかがでしょうか。