アンチエイジング診療や自由診療を
標榜する医療機関にとって、
患者への接遇やマナーは
継続的な集患・増患を目指す上で
大きくものをいいます。

自由診療は、払ってもらう医療費が
どうしても高めになります。

それを承知して契約してもらうとなると、
そして再来院をお願いするとなると、
患者に与える印象は重要ですね。

それに現在は医療の世界でも
口コミ」の影響力が強まっています。

「……あそこのクリニックは、
治療はまあまあ満足できたけど、
院長やスタッフの態度が
イマイチだったかな~」
なんて噂を流されてしまうのは
できるだけ避けたいところです。

さて今回は、その手の話題です。

以前にも本ブログで取り上げました、
いろいろな医療機関でときどき話題に上る、
マスク着用時のマナーについてです。
以前の記事はこちら)

医療機関で、マスクを着用する理由とは

現在の日本社会では、
マスクを見かける頻度が
大幅に上がって久しいですね。

つまりマスクをしたスタッフに出くわすのは、
医療機関の専売特許ではありません。

それでも、
「マスクをとりわけよく見かけるのはどこ?」
と質問を受けたら、たいていの方は
「病院が多いかな?」と回答することでしょう。

1.感染症の流行をせき止めるため

これはやはり、大きな理由でしょう。
インフルエンザをはじめ、
毎年多様な感染症が流行します。

マスクをしていたからといって、
その予防効果には限度があるわけですが……
それでも、厚労省のような国の機関も
マスクによる効果は認めています。

2.一部のアレルギー疾患に備えるため

花粉症の時期は、マスクをする人が
自然と街にあふれます。

それにスタッフの中にも、
花粉症持ちの人が含まれる可能性は
低いものではないでしょう。

3.患者に安心感や好印象を与えるため

上述した1.や2.の理由がある以上、
院長やスタッフがマスクをしていると
それだけで、
「感染症対策がしっかりしている医院」
「清潔感でいっぱいの医院」と
感じ取ってもらえます。

現在は、患者向けに
マスクを配布する医院も
登場しています。

これは、希望があった場合に
マスクを提供するというサービスです。
特にインフルエンザ等が
猛威をふるっている時期であれば、
確かに喜ばれるサービスでしょう。

マスクをずっと着用したままだと、逆効果になることもある? 

さて、医療機関でマスクが
当たり前のアイテムと化している理由を
整理してみましたが、だからと言って
マスクがいいことずくめだとは
言い切れません。

「患者にあいさつするときや
話しかけるときに、
マスクをしているとよくない」

という意見を聞いたことはないでしょうか? 

マスクをしていると、
口元は完全に隠れます。
それだけではなく、
顔全体の様子がわかりにくくなります。

そのような状態で
あいさつをするのは失礼に当たる、
と感じる人がまだ社会には多いのです。

また、インフォームドコンセントが
常識と化している時代です。

何かあるたびに患者に対して
適切な説明をする必要がありますが、
このときもマスクをしたままだと
信頼されないことがあります。

マスクをずっとつけていると、
声がはっきりと
聞き取れないこともありますし、
誠実さに欠ける印象に
なってしまうことがある
のです。

マスクはしたほうがいい? しないほうがいい? 

マスクをする、しないに関して
絶対的な回答はありません。
各医療機関が、それぞれの判断で
決めていくしかないでしょう。

ただし院長だけの判断で決めるよりは、
院内全体で意見を集めてから
にしたほうがよいでしょう。

院内で話し合ったほうがいい点を
まとめると、次のようになりますね。

1.患者の世代や特徴

自由診療も多種多様ですが、
高齢者や年少者、重病人が
よく集まる可能性がある場合は
マスクを着用して
感染症の予防に
努めたほうがよいでしょう。

美容関係の診療に注力するのであれば、
健康を損ねやすい方は
めったに来院しないでしょうし、
感染症にとらわれる必要性は
低くなる
でしょう。

マスクの必要性がないと判断した場合でも
何らかの伝染病が大流行している時期
例外的にマスクを着用してもよいでしょう。

2.患者と込み入った話をする機会の多さ

自由診療では、カウンセリングをする
機会が自然と増えます。

カウンセリングといえば、
たいていは数十分にわたって
重要な話をするものです。
その間にマスクをずっとつけていると、
じゅうぶんなコミュニケーションを
取れないかも
しれません。

カウンセリングの担当者は
マスクを原則としてつけない、
という方針にしてもよいでしょう。
その反対で、受付等で働く
クラークのようなスタッフは
ずっとマスクをしたままでも
問題は起こらない
でしょう。

3.マスクをした状態で患者に話しかけるときの心得

マスク着用を導入したら、
院内の目立つ場所に
「マスク着用の理由・目的」を掲示して、
全患者に理解を求めるのがいちばんです。

ただ、それでも前述したように
マスクをしたままでは
無礼に思われてしまうことがあるわけです。

そこで、
「マスクをつけたままで失礼します」と、
ひと言添えながら話しかける、

といったルールを設けるという方法があります。

あるいは、大事なあいさつをする場合は、
そのときだけマスクを外す
というルールを設けてもよいでしょう。

マスクの着用は、医院の状況に合わせた決断を

マスクについては、
すべての医療機関に
共通したルールはつくれません。

患者の意見もバラバラで、
マスクを歓迎する人もいれば
その正反対の反応を示す人もいます。

このため、医院を取り巻く
あらゆる条件をよく考慮した上で、
方針を決めることが大切です。