もうすぐ4月になりますね。
新たな年度のはじまりを迎える医療機関であれば、
期末の作業等でお忙しいのではないでしょうか? 

年度の終わり・年度のはじまり
といえば、法制度の改正もつきものですね。

法令の種類も幅広いのですが、
この時期が施行日に制定されることは
よくある話ですね。

では、開業医にとって影響のある改正が
今年の春はあるのでしょうか? 

開業医の大半は、

「大企業」
「中小企業」

という分類でいえば
後者にあてはまるはずですが、
まさに中小企業にとって大きな影響を及ぼす
新しい法改正が今年の春に施行されます。

それではどんな法令なのか、
今後のスタッフ雇用がどう変わるのか、
学んでいきましょう。

令和2年から3年にかけて行われた法改正のあらまし

「パートタイム・有期雇用労働法」が
正式に施行されたのは、
令和2年4月1日のことでした。

ということは、すでに1年近くが経過しています。

とはいえ、
当初は大企業だけが施行の対象でした。

中小企業に関しては、
まる1年経過してから
施行される、と決まっていたのです。

ではこの法令で、具体的に
大きく変わる点は何でしょうか? 

それは、

「同一労働・同一賃金」

ではないでしょうか。

パート勤務やアルバイトのようないわゆる
「非正規雇用」でも
正社員と同じ仕事をした場合は、
同じ金額を払わなくてはならない、
という内容ですね。

同一の金額にすべき、と定められるのは

  • 基本給
  • 賞与
  • 各種手当

です。

また

「福利厚生・教育訓練」

に関しても正社員と
非正規雇用の従業員の間で
差をつけることが制限されるようになります。

ここで忘れてはいけないのは、

「正社員の賃金<非正規雇用の賃金」

といった場合でも、同一に
変えていかなくてはならないということです。

医療機関の場合、非正規の医師や看護師の
受け取る金額が、正社員のお給料より高めに
なってしまうことがありますが
その場合であっても是正が求められます。

スタッフの待遇に、なぜここまで厳しくなったのか? 

日本では長い間、

「正社員の待遇は、よいもの」

という考え方が浸透していたかと思います。

確かに

「正社員のほうが重い責任を背負う」

という傾向が強いですし、
受け取る額が正社員の方が高いことが
当たり前になっているのかもしれません。

それでもこの点は、かなり前から
問題視されてきました。

労務関係の判例を
振り返ってもその点は明らかで、
労働者側に有利な判決が
出されたこともあったのです。

そして今回、このように法令が施行されたことで、
あいまいにしておくことは許されなくなった、
といえます。

万一、訴訟になってしまった場合、
医療機関側に何かあれば、
訴えたスタッフ側が有利になる可能性が高いです。

今回の法改正で

「説明義務の強化」

という概念が明文化されました。

パートや契約社員のスタッフが、

「正規雇用のスタッフとの待遇が違う」

と感じたときは
院長に説明を要求してよいことになっています。

お給料やボーナスにも差はつけにくくなっています

さて、法令をこの場に引用すると
長文になってしまいますので
今回は割愛させていただきます。

大事なところに的を絞って、
何が大切なのか一緒に見ていきましょう。

1.基本給

基本給の決め方は、
各スタッフのパーソナルデータを
土台にするものです。

  • 能力・経験値
  • 成果・働きぶり
  • 勤続年数

これらのデータに違いがあれば、
もちろんスタッフの間で基本給に差がつくことは
問題にはならないかと思われます。

しかし、これらのデータに違いがない場合は、
正社員かどうかに限らず、
同じ金額にしないといけないことになっています。

正社員ではないスタッフにも、
正社員と同じ基本給を
与える義務が課されるようになるのです。

まったく同じ能力や仕事ぶりのスタッフが
2名同時に在籍することは、
実際にはそんなに起こらないかもしれません。

ただ看護師のようなポストの場合、
正規スタッフ・非正規スタッフが同時に
在籍することは珍しくないですし
油断は禁物でしょう。

2.ボーナス

ボーナスもまた、基本給とほぼ同じ趣向の
義務が課されます。

各スタッフの貢献度が同一レベルであれば、
同じ金額を払う必要があると思われます。

逆に言えば、正社員のスタッフが
非正規のスタッフよりも職場に貢献できていないと
判断できるときは、期末の正社員のボーナスは
非正規のスタッフより
下げないといけないということになります。

スタッフの待遇において、抜本的な見直しが必須の時代へ

「労働法」は労働者を優遇する法令、

と言われますが、

「パートタイム・有期雇用労働法」も

まさにそれですね。

これからは、正規・非正規
どちらのスタッフにも毎月の給与をはじめ、
同水準の待遇を常に保証しないといけません。

法令はとてもややこしいですし
1~2回目を通したくらいでは
じゅうぶんに理解するのは難しいものです。

とはいえ、
ひとりで悩む必要はありません。

顧問の社会保険労務士へ相談したり、
また管轄の労働局に不明点を随時
問い合わせてみたりして、
スタッフから苦情の出ない雇用体制
つくり上げてみてはいかがでしょうか。


参照元:厚労省発行「パートタイム・有期雇用労働法のあらまし 有期雇用労働法のあらまし」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000695149.pdf