コロナウイルスの猛威は、
医療を含めあらゆる業界に混乱を招きました。

4~5月ころと比べ、
町中に人通りが復活しつつありますが、
感染者は依然として増えており
予断を許さない状態です。

ところで、
患者が減ることによって
発生してくる新たな問題は 
売上の低迷も怖いものですが、
もっと怖いのは経営費用の支出
でしょう。

さまざまな固定費がありますが、
何よりも人件費の負担が気がかりではないですか。

そんな中、
今注目されているのが
雇用調整助成金」でしょう。

できれば使わずに済ませたいものですが、
経営者ならば知っておくに
越したことはありません。

今回はこの「雇用調整助成金」について、
お話したいと思います。

雇用調整助成金が突如、浮上した背景

「そもそも、雇用調整助成金とは何なのか?」
という話から始めたいと思います。

1.雇用調整助成金とは

雇用調整助成金は以前から存在した制度ですが、
コロナウイルスの深刻さに対応するため、
特例措置が急遽実行されました。

この特例は簡潔に書くなら、

「コロナウイルスが原因で、
事業を縮小する以外の選択肢がない事業者に対して
従業員の雇用を続けるための費用を助成する制度」

です。

支給対象となるのは、
労使協定にもとづいて
「休業補償」を出す事業者です。

そして、
1ヶ月間の売上が
1年前の同じ月と比べて

5%以上減っている場合です。

なお平常時であれば、
雇用保険に一定期間加入していないスタッフは
助成金を受けられません。

しかし、
現在は非常時のため、
加入期間が一定期間を経過していないスタッフや
加入していないスタッフも対象となります。

したがって、パートやアルバイトの
スタッフも受け取ることが認められます。

2.第2次補正予算の影響

第2次補正予算は6月12日に
成立したばかりですが、
以下のような変更が決められました。

  • 特例の適用は
    6月末までから、9月末までに延長
  • スタッフの雇用を維持した
    中小企業に関して、
    助成率を10/10に引き上げ
  • ただし限度額は、
    スタッフ1名につき日額8330円から
    15000円に引き上げ

雇用調整助成金の手続きを実際にしたくなったら

では、実際に
「雇用調整助成金」を受け取るには、
どのような手続きをすればいいのでしょうか?

手続きを行う際の注意点と併せて、
ご案内します。

1.手続き上の注意点

「経営難に直面して
医院の休業を実施したらすぐに手続きを……。」

と考える方も多いかもしれませんが、
休業する前にスタッフとの間に
きちんとした労使協定を
結ばないといけません。

このため、
スタッフたちにきちんとした説明を行う機会を
設けて理解を求めましょう。

休業したほうがアフターコロナ、
またはウィズコロナの時期に向けて
医院が健全に延命できるチャンスがあること、
その分の補償を、行政から受けられることを
説明しましょう。

また、
原則として休業を実施してから
支給申請となりますし、
審査が必ず行われます。

言い換えますと、
スタッフに払う休業手当は
医院が先に負担しないといけません。

すなわち、医院が費用負担をしてから
負担分を支給されるまで
期間が空いてしまう可能性があるので、
注意したほうがいいでしょう。

2.社会保険労務士の活用が推奨されます

コロナウイルスという一大事であるため
今回の特例では平常時と異なり、
必要書類が一部免除されています。

それに休業するなら時間ができますし、
自分自身で準備に
取り掛かってもいいかもしれませんが……。

書類を単独でそろえるのは、
思いのほか時間や労力を要求されるものです

幸い、雇用調整助成金は
社会保険労務士の専門分野になりますので、
社会保険労務士に確認をしたほうが、
申請書類の確認・収集・申請手続きが
スムーズにいくと思います。

しかし、
社労士に依頼すれば当然、報酬は必須です。

しかし、熟練した社労士に頼めば
手続きが確実に迅速になります。

顧問社会保険労務士に、
あるいはこの手の制度に
詳しい社労士を探してもよいでしょう。

できれば顧問に頼むほうがよいですが、
社労士にも得意不得意があると思います。

この制度に詳しい地域の社労士を探すことは
検索すれば難しくないでしょうし、
セカンドオピニオンのような形で、
相談してみるとよいでしょう。

万一、休業補償を出す余裕がないとき

さて、この制度を頼りたくなるのは、
基本的に「経営が傾いている場合」だと思います。

一刻も早く、
助成金を受けたいところですが
あいにくと日数を要します。

それに前述のとおり、
まずは医院側が
休業補償を乏しい資金の中から工面して
スタッフ一同に支給しないといけません。

この窮状を救うため、
休業するスタッフが行政から直接、
手当を受けられる
「新型コロナ対応休業支援金・給付金」
という制度が用意されました。

この制度では、
休業前の賃金の80%
(ただし、支給金額には上限あり)が
申請した従業員に支給されます。

したがって、
特に財政面で苦しいなら
スタッフにこの制度の申請を
呼びかけてもよいでしょう。

まとめ

コロナのために集患が難しい状況であれば、
雇用調整助成金の特例を使えば
財政上の被害額を抑制できる可能性があります。

ただ、
この制度は令和2年9月末が期限となっています。

スタッフ一同と話し合う必要もありますし
急いで検討することがポイントです。

特に社会保険労務士と協議するなどして、
損のない申請を目指すことが求められますね。

いずれにしても、現段階で発表されている
受取可能の期限まで2ヶ月もないので、
確実に早めに受け取ることを
目指したほうが良いでしょう。

参考文献

①厚生労働省HP『雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)』
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html

②厚生労働省公開資料「令和2年6月 12 日付け特例措置に関する
雇用調整助成金(緊急雇用安定助成金)FAQ
https://www.mhlw.go.jp/content/000640014.pdf

③厚生労働省公開資料「短時間休業で雇用を維持しましょう!」
https://www.mhlw.go.jp/content/000632949.pdf