医療機器は、
高額な製品が多々あります。

数百万円から数千万円もの出費になることも
珍しくありません。

医療機器は
あらゆる科目で必要ですし、
保険診療主体の医療機関でも
いうまでもなく必需品です。

もっとも
自由診療で開業した場合は、
その必要性は一段と高まると思われます。

「患者に高い料金を払ってでも通いたい」

そう感じさせるためには、
さまざま売り物が要求されます。

特別な診療活動を可能にする
高価で希少価値のある医療機器も、
その一端を担います。

しかし
高額の設備投資は経営を圧迫しかねません。

そこで、
減価償却を中心とした節税対策が
自然と求められるはず
です。

今回は、
設備投資の際の減価償却、
そして節税に関して
役立つ知識をまとめました。

減価償却の基本的な仕組み

医療機器における減価償却は、
簡単に表現するなら

「購入した製品の法定耐用年数に応じて、
帳簿上の必要経費を決める行為」

となります。

医療界に限らず、
設備投資が必要な業界は多いもの。

そこで、

「耐用年数に応じて経費を分割することが
税法上望ましい」

と考えられているのです。

また、高額な設備も
いずれは廃棄や買い替えが必要となります。

その際に事業者は
新たな出費を強いられますが、
減価償却の制度を通して
経費・納税額をコントロールしていれば、
将来的な資金繰りが自然とはかどる

かもしれません。

さて、減価償却の制度は、
購入した製品の価格に応じて、
計算方法が異なります。

「どのように計算方法が異なってくるのか?」

下記にご紹介したいと思います。

10万円未満

全額を必要経費に含めてかまいません。

10万円以上、20万円未満

3年間、経費に算入できます
(購入価格を3で割ります)。

30万円未満

次の条件を満たすなら、
特別な措置が認められます。

  • 青色申告をしている
  • 常勤するスタッフ数が1000人以下
  • 出資金が1億円以下、
    または出資持分がない

30万未満の製品の総額が
(年間で)300万円に届くまで、
全額をその年度の必要経費に算入できます。

さて、
突如「30万円未満」に話が飛びましたが、
「20万円以上、30万円未満」の場合を
規定する制度は特にありません。

よって、⒛万円以上の製品を
購入したときは、
「30万円未満」もしくは
次の「すべての価格に当てはまる計算方法」
どちらかを選ぶことになります。

すべての価格に当てはまる計算方法

「定額法」と「定率法」の
2通りに分かれます。

定額法

この計算方法は
法定耐用年数でその製品の価格を割って、
1年ごとの経費算入額を決める
計算方法です。

この計算方法はかなりシンプルでわかりやすいです。

たとえば1200万円の医療機器を購入して
各耐用年数が3年、5年、10年だった場合
以下のような計算方法になります。 

・耐用年数が3年の場合
→各年度の必要経費に、
 400万円ずつ申告できます。

・耐用年数が5年の場合
→各年度の必要経費に、
 240万円ずつ申告できます。

・耐用年数が10年の場合
→各年度の必要経費に、
 120万円ずつ申告できます。

定率法

これは税法で定められた
「償却率」を用いて経費算入額を決めます。

耐用年数が4年の1200万円の製品の場合、
定額法を使うなら
毎年300万円を算入します。

しかし定率法なら、
耐用年数が4年の場合
償却率は0.625です。

初年度の経費算入額は
1200万×0.625=750万円です。

2年目は
(1200万-750万)×0.625=281.3万円
になります。

計算がやや複雑になるのですが、
経費算入額が毎年低下します。

このため、
製品の劣化に合わせて
算入額も下がることになります。

定率法では、
製品が新品の状態であるほど、
経費算入額が高めになることがわかります。

医療機器の導入年数が経過していくにつれて
算入額も下がっていくため、
製品の実態に見合った計算方法
と考えられています。

今とても人気を集めている「医療機器の特別償却」

さて、
自由診療で儲かっていて
おおいに節税したい場合、

「医療機器の特別償却」

という仕組みも活用したいところです。

この制度を利用すると、
初年度の減価償却費を多めに算入できてお得です。

たとえば
1200万円の医療機器で
法定耐用年数が4年の場合は
定額法で計算するなら
毎年の算入額は300万円ですが
特別償却が認められる場合は
価格の12%を上乗せできます。

1200万×0.12=144万円を
300万円に加算して
444万円も算入できるのです。

特別償却の適用を受けるための
主な条件は次の通りです。

  • 青色申告をしている
  • 購入した医療機器が500万円以上
  • 購入した医療機器が
    医薬品医療機器法の指定を受けて2年以内

さらに、
医療機器の種類も重要です。

この制度が適用される医療機器は、
国が細かく定めています。

そのため、
官公署等のWebサイトから
最新の情報に目を通して判断する必要があります。

また、
この制度には期限があります。

昨年の2019年に、
適用期間が2年延長されました。

したがって、

「来年の2021年3月31日までに
購入した医療機器でないと、適用は受けられない」

ということになります。

したがって
この制度を利用して、
設備投資と節税の一石二鳥を実現したいなら、
来年春までに終わらせないといけません。

設備投資をするなら、必ず正確で効率的な減価償却を

税法はかなり複雑ですし、随時改正されています。

減価償却をめぐる制度も
どんどん変わっています。

現に、利用価値のある
「医療機器の特別償却」制度も
使えるのは来年春までです。

最新の税制度に合わせることが第一でしょう。

さて……
設備投資の際の節税で、
大きな牽引役となってくれるのは
顧問税理士でしょう。

集患に成功すると
毎日が多忙になりますが、
時間をつくって税理士と連絡をとりながら、
税金面で損をしない
設備投資方法を考えていくことが
ベストでしょう。