日本は世界一の長寿国ではありますが、
厚生労働省の推計等によると、平成25年現在での
「平均寿命」と「健康寿命」の差は、
男性およそ10歳、女性およそ12歳あります。

その根底にあるのが生活習慣病をはじめとする、
いわゆる「加齢性の疾患」です。
特に近年、生活習慣病の発症や進展に
関与していると考えられているのが、
AGEsの蓄積です。

今回はこのAGEsを蓄積させない、
さまざまなAGEs対策を考えてみます。

AGEs対策の基本はやはり運動!? 適度な運動でAGEsを作らせない

体の中にAGEsが蓄積される
「メイラード反応」の経路には
複数あることがわかっています。

たとえば、ある経路での中間産物である
メチルグリオキサール(以下、MG)という
化合物があり、1型糖尿病の人の血中には、
糖尿病ではない人の6倍も含まれていることが
わかっています。

MGは、グルコースの10,000倍の反応性を
有しているため、未反応のアミノ酸残基に作用し、
体の中での糖化反応を急速に進めてしまいます。

つまり、高血糖の状態が長く続くと、
タンパク質と糖との反応が進み、
短期間でAGEsが蓄積されている可能性が
考えられています。

ではどうすればよいのか。
AGEsを作るタンパク質と糖との反応が
起きないよう、必要以上にタンパク質や糖を
体の中に溜めておかなければよいのです。

また、血糖値は食後30分~60分程度経過すると、
最高値を示すようになります。
※食事内容や体質によって個人差があります。

このタイミングで軽い運動をすると、
余分な糖はエネルギーとして消費され、
メイラード反応を起こしにくくなると
考えられます。

ある研究*8では、高齢者に対して歩数計を
1~2年間貸与し、月 1 回の面談により
歩数情報を確認して運動継続を奨励、
同時に12ヶ月ごとのアンチエイジング健診を
行いました。

実験開始時、1年後、2年後の状態を比較すると、
継続的に同年代よりも多く歩いていた人は、
筋年齢や血管年齢が暦年齢よりも
若く保たれていただけではなく、
糖化ストレス指標も軽減されている
ことがわかりました。

これらのことから、
食事の時間と関連させて適度な運動をすると、
長時間にわたる高血糖状態を作り出さないことで、
「AGEsを作らせない」ことにつながる
考えられます。

食は生きるための基本 食材と調理法でAGEsをいれない

AGEsは、タンパク質と糖が
加熱されることで作られますので、
余分な「タンパク質+糖」を摂らないこと、
あるいは加熱させない調理法を選択することが
必要です。

同じ食材を使用した料理でも、
調理方法によってAGEsの含有量は
大きく変わってきます。

いくつかの例を挙げてみましょう。*16

食材 調理法 AGEs含量
じゃがいも 25分間ゆでたもの 17KU/100g
自家製フライドポテト 694KU/100g
ファーストフードの
フライドポテト
1522KU/100g
とり胸肉
(皮なし)
692KU/90g
1時間煮る 1011KU/90g
15分焼く 5245KU/90g
牛肉など ローストビーフ 5464KU/90g
フランクフルト
(牛肉・7分ゆでる)
6736KU/90g
ベーコン
(豚肉・電子レンジで3分加熱)
1173KU/13g
卵黄(10分ゆでる) 182KU/15g
卵白(10分ゆでる) 13KU/30g
目玉焼き 1237KU/45g

※KU :AGEs含有量のCML当量
※CML:カルボキシメチルリジン。AGEsの一種。

同じ食材でも、加工法や加熱法が違うと、
AGEsの含有量が変わってくることがわかります。
上記の中で「ベーコン」は一見少ないように
見えますが、比較するグラム数が違います。
ほかの2つの食品と同等の重さであれば、
8000KU以上となってしまいます。

タンパク質や糖が少ない
「野菜、きのこ類、海草」などを、
加熱せずに食べることが、
もっともAGEsを蓄積しにくい食生活と
いえそうです。

また、これらは食物繊維を多く含むため、
その後に加熱した肉などを食べても、
タンパク質・糖・AGEsが吸収されるのが
遅くなるため、AGEsの余分な蓄積を
防ぐことにつながります。

また、飲料の中にも、AGEsは含まれています。

飲料 AGEs含量
砂糖入りココア 656KU/250ml
野菜ジュース 5KU/250ml
りんごジュース 5KU/250ml
ワイン 28KU/250ml

たとえば、野菜ジュースやりんごジュースなどは、
もともとタンパク質や糖の含有量が少ない食材を
利用しているため、加工されても
AGEsの含有量は低くなります。

一方で「砂糖入りココア」の場合は、
ココアに含まれるタンパク質と糖(砂糖)との
反応が起こりやすく、結果的にAGEsの含有量は
高くなります。

あんなものからこんなものまで 「成分」の力を利用してAGEsを抑制

体内でAGEsを生成する
「メイラード反応」の過程には、
タンパク質と糖の反応の中に
「酸化」を介している
ことがわかっています。

つまり、体の中での「酸化」反応を防ぐ成分は、
メイラード反応を抑制する可能性があると
考えられるわけです。

【クエン酸】

ある研究によると、糖尿病を発症させたマウスに
クエン酸を経口投与したところ、糖尿病患者の
血液中に見られるケトン体を減少させ、
AGEsの生成を抑制し、白内障や腎機能低下の
進行を遅らせることがわかりました。

【ポリフェノール】

ある研究によると、
いくつかの果物からポリフェノールを抽出し、
AGEs生成抑制機能などを調べたところ、
ポリフェノールの含有量とほぼ比例する形で、
AGEs生成抑制機能が高くなることが
わかりました。

【ハーブ類】

ハーブティなどに利用されている
カモミール(ローマカミツレ)の抽出液や、
その成分中ポリフェノールの一種である
カマメロサイドと呼ばれる成分は、
AGEsの一種である3DG、CML、ペントシジンの
生成抑制作用が確認されています。
ただし、AGEsが生成される経路は複数あるため、
一つの経路を阻害しても、他のバイパス経路から
AGEsの生成は進んでしまいます。
これらを抑制するために、
ドクダミ、セイヨウサンザシ、ブドウ葉などの
混合ハーブエキスを用いることで、
より効果的なAGEs生成抑制効果が
確認されています。

AGEsを作らせない!いれない!生活を

AGEsは、食事などで摂取するほか、
体内でも生成されています。

しかし、AGEsを作らせないために
適度な運動を続ける生活、
同じ食材でも調理方法で増えるAGEsを
摂りこまない食生活は、
そのまま生活習慣病の予防へとつながる
生活習慣です。

さらにAGEsを蓄積させない成分を
積極的に摂ることで、
いつまでも若々しい体を作ることができます。

こうした生活習慣は、
そのままアンチエイジングへと
つなげていくことができるのです。

参考

  1. 内閣府 平成29年版高齢社会白書(概要版)
    http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/html/
    gaiyou/s1_2_3.html
  2. 厚生労働省 健康寿命の都道府県格差の縮小について
    http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000108062.pdf
  3. 生活習慣病の発症・進展におけるToxic AGEs (TAGE)
    -RAGE系の関与:-新たな治療戦略-
    金医大誌(J Kanazawa Med Univ)37:141-161, 2012
    http://www.kanazawa-med.ac.jp/koho/sousetsu_takeuchi.pdf
  4. 生活習慣病の発症・進展におけるToxic AGEs (TAGE) の関与
    -新たな予防戦略-
    ~食事性AGEsおよび糖毒性の真実~
    金医大誌(J Kanazawa Med Univ)40:95 - 103, 2015
    http://www.kanazawa-med.ac.jp/koho/tage.pdf
  5. Significance of Advanced Glycation End Products in
    Aging-Related Disease.
    http://www.anti-aging.gr.jp/english/pdf/2010/jpn/7(10)112-119jpn.pdf
  6. からだサポート研究所 糖化研究の歴史的背景
    http://ebn.arkray.co.jp/disciplines/glycation-stress/stress-16/
  7. Effects of pyridoxamine in combined phase 2 studies of
    patients with type 1 and type 2 diabetes and overt nephropathy.
    Am J Nephrol. 2007;27(6):605-14. Epub 2007 Sep 6.
    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17823506
  8. Effect of continuous walking exercise program on the
    glycative stress marker in the elderly.
    http://www.toukastress.jp/webj/article/2017/GS16-09J.pdf
  9. Glyoxalase system in clinical diabetes mellitus and
    correlation with diabetic complications.
    Clin Sci (Lond). 1994 Jul;87(1):21-9.
    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8062515
  10. Advanced Glycation End Products in Foods and a
    Practical Guide to Their Reduction in the Diet
    http://jandonline.org/article/S0002-8223(10)00238-5/ppt
  11. Citric acid inhibits development of cataracts,
    proteinuria and ketosis in streptozotocin (type1) diabetic rats
    Published online 2010 Feb 1. doi: 10.1016/j.bbrc.2010.01.095
    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2917331/
  12. αリポ酸およびビタミン E 誘導体の抗糖化活性
    http://www.anti-aging.gr.jp/english/pdf/2013/10(3)4254_J.pdf
  13. Oxidative Stress Markers
    http://www.anti-aging.gr.jp/english/pdf/2010/jpn/J7_5_36.pdf
  14. からだサポート研究所 天然物中の糖化反応阻害成分
    http://ebn.arkray.co.jp/disciplines/glycation/ages-10/
  15. 機能性に優れた県産食品素材の検索(Ⅲ)
    http://www2.pref.iwate.jp/~kiri/infor/theme/2005/pdf/H17-02-estima.pdf
  16. 老けない人はこれを食べている
    AGE牧田クリニック院長 牧田善二
    新星出版社
    http://www.shin-sei.co.jp/np/isbn/978-4-405-09344-7/