アンチエイジングを考える上で、
重要になってくるのが食生活です。

一般的に、日本人の食生活の基本である
「日本食」が、健康長寿に繋がることが
知られています。

他に健康寿命を伸ばすと注目されているのが、
西洋の代表的な長寿食ともいえる、
ヨーグルトやチーズなどの「発酵乳製品」です。

実は、ヨーグルトがAGEsにも効果的との
報告があります。

今回は、そのヨーグルトに秘められた、
AGEs抑制の可能性について見ていきましょう。

ヨーグルトがもつ健康効果

ヨーグルトなどの発酵食品は、微生物等の働きを
使って食材を発酵させた加工食品であり、
最近では様々な機能性を付与したヨーグルトが
製品化されています。

健康や美容、アンチエイジングのために、
すでに多くの人が食生活にヨーグルトを
取り入れているでしょう。

実際、総務省統計局が公表している資料*2では、
1世帯当たりのヨーグルトへの年間支出金額は
過去5年間で4割ほど増えています。
特に50歳代以上の世帯で、増えているようです。

ではまず、その効果について
おさらいしてみます。

ヨーグルトに含まれている
乳酸菌やビフィズス菌は、腸内細菌叢の
善玉菌を増やします。

すると、美肌や健康に繋がるビタミンB群が
多く生成されるようになります。

さらに善玉菌は、腸内環境を悪化させ、
有害物質や発がん性物質を発生させる
悪玉菌の抑制にも役立ちます。

その他にも、骨の強化、コレステロール吸収抑制、
抗酸化作用の強化といった効果が知られており、
ヨーグルトを習慣的に食べることは、
健康効果に繋がるとされています。

多くの企業がヨーグルトの効果に着目し、
製品化していますが、その性能は
すべて解明されている訳ではなく、
AGEsに対する効果についても、
まだ解明されていないことが
たくさんあります。

AGEsは、体内で生成されたり、
食事を介して摂りこむことで体内に蓄積され、
老化を促進させてしまう物質です。

このAGEsに対して、
ヨーグルトは抑制効果があるのか、
研究がなされています。

ヨーグルトはAGEsを抑えられるのか?

ところで、「ヨーグルト」と一言でいっても、
製造メーカーや商品ごとに、
ヨーグルトに含まれる菌の種類は違います。

ヨーグルトには基本的に、
乳酸菌やビフィズス菌が含まれますが、
メーカーごとに開発された菌は、
同じ「乳酸菌」でも、期待できる主な効果などに
違いがあります。

では、ヨーグルトに含まれる菌によって、
AEGs抑制効果にも違いがあるのでしょうか。

2017年に、市販のヨーグルト12種類を使用して
ヨーグルトのAGEs生成抑制作用についての
研究が行われています。*1

その結果を見ていきましょう。

【研究方法】

試料として市販のヨーグルト製品12種を使用し、
ヒト血清アルブミンとグルコースとの共存下で
AGEs生成がどれだけ阻害されるかを
試験しています。
AGEs生成阻害作用の陽性対照としては、
アミノグアニジンを用いています。

試料としたヨーグルトは、
20°C、3,000 rpmで15分間遠心分離した後、
乳清と乳固形分に分けました。
さらに乳固形分は精製水中で超音波処理によって
分散後、水抽出液を得て試料としています。

※アミノグアニジン:
糖尿病の合併症の治療薬として開発されていた
医薬品であり、糖化抑制効果がある。
副作用の問題などがあり、医薬品としては
実用化されていない。

【AEGs生成抑制効果の算出方法】

グルコース+ヒト血清アルブミンの反応液に
試料を添加し、60°Cで40時間反応させた後の
蛍光強度を測定しています。
一部のAGEsには蛍光性があるため、対照と比べて
蛍光強度がどれだけ下がるかを見ることで、
抗糖化活性(IC50 値※で表示)を算出しています。

※IC50値:
50%生成阻害濃度。
目的物の生成が50%阻害されるときの
調査対象の濃度。

【結果】

この研究では、IC50値が50 mg/mL未満のときを
抗糖化活性ありとしています。
使用したヨーグルト12種のうち9種で
抗糖化活性を確認できたそうです。

なお、9種のヨーグルトの
平均 IC50値は18.9mg/mL で、
アミノグアニジンのIC50 値に比べると
小さい(1/160倍)活性でした。

また、ヨーグルトの AGEs 生成阻害作用
乳清中の成分に認められ、乳固形分には
認められなかったそうです。

そこで、乳清を分子サイズによって分画した結果、
AGEs生成阻害作用は、分子量10,000未満の画分に
強く認められました。
さらに分子量10,000未満の画分を
疎水性カラムで分画した結果、
AGEs生成阻害作用は「親水性画分」に
認められたとされています。

この研究で分かったこと

上記のとおり、
ヨーグルトにはAGEs生成阻害作用がある
ということが分かりました。

また、AGEs生成抑制作用のある成分は、
主に乳清中に存在していることも分かりました。

乳清の栄養価の高さは以前から知られており、
分岐鎖アミノ酸含量の高さからスポーツ領域では
プロテインの原料として活用されています。

具体的には、ラクトフェリンなどの蛋白質、
アミノ酸、カルシウム、ビタミン、ミネラル、
そして乳酸菌など、多くの栄養素が
乳清中に含まれています。

研究結果からは、
アミノ酸、カルシウム、ビタミン、ミネラルなど
低分子の水溶性成分が、AEGs抑制に関与している
可能性があると推定されています。

ヨーグルトなら何でも良いわけでは無い?

身近なヨーグルトという食材に
AGEs生成阻害作用があることは、
手軽なアンチエイジングの手段として
嬉しいことではあります。

しかし、今回確認されたAGEs生成阻害作用は、
試料として使用された市販のヨーグルト製品
12種の中でもバラつきがありました。
抗糖化活性の平均 IC50値は18.9mg/mLでしたが、
一番高いもので144.7 mg/mL、
一番低いもので4.2 mg/mLという
大きな開きがあったのです。

つまり、現在のところでは
「ヨーグルトにはAGEs生成阻害作用がある」
とは言い切れず、
「ヨーグルトにはAGEs生成阻害作用が
期待できるものがある」
ということになります。

また、どの程度のIC50値があれば
どれだけの効果が期待できるのかといった
基準も未だ明らかではありません。

ヨーグルトがどの程度AGEsの生成を抑え、
アンチエイジングに役立つのか。
今後のさらなる研究を期待しましょう。

参考

  1. Anti-glycative effect of yogurt: Prevention of
    advanced glycation end product formation
    Glycative Stress Research 2017; 4 (1): 025-031
    http://www.toukastress.jp/webj/article/2017/GS16-24J.pdf
  2. 総務省統計局
    <家計ミニトピックス>ヨーグルトへの支出
    http://www.stat.go.jp/data/kakei/tsushin/pdf/28_6.pdf
  3. 市販ヨーグルトの官能評価
    日本官能評価学会誌, 14巻(2010), 1-2号, p.40-45
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsse/14/1-2/14_40/_html/-char/ja/