人の老化や健康に深く関わる物質として注目され、
近年研究が進んでいる“AGEs”と呼ばれる物質。

生体内に蓄積していくことによって、
肌質や髪質の変化をはじめ、
様々な老化現象に影響を及ぼしている
ことが分かり、アンチエイジングの分野でも
関心が集まっています。

では一体、AGEsとは、
どのようなものなのでしょうか。

AGEsとは?

AGEsとは、最終糖化産物
(Advanced Glycation End Products)の略で、
タンパク質のアミノ基と糖質が反応した結果、
最終的にできる様々な物質の総称です。

現在分かっているだけでも数十種類あります。
中には毒性が強く、体内に蓄積されると、
あらゆる老化を進行させる原因となる
種類があることも分かっています。

老化を進行させるものとして、
身体の「サビ」とも言われる酸化は有名ですが、
AGEsは身体の「焦げ」とも表現されています。

老化というと、
分かりやすいのはお肌のシワやたるみですが、
目に見えない部分でも影響があります。

例えば、AGEsが血管に蓄積すると
心筋梗塞や脳梗塞の原因となり、
骨に蓄積すると骨粗しょう症
目に蓄積すると白内障の一因ともなります。

AGEsが身体に蓄積されるしくみ

AGEsが身体に蓄積されるしくみは、
2通りあります。

① 体内で作られるパターン

人間に必要な三大栄養素は
「糖質」「脂質」「タンパク質」であり、
中でもは、身体のエネルギー源です。

しかし必要以上に摂取してしまうと、
代謝しきれずに体内のタンパク質と結合し、
体温で熱せられるとことで
「糖化(メイラード反応)」が起こります。
これは誰の体の中でも起きる現象ですが、
その際につくられるのが、AGEsです。

② 食べ物から体内に入るパターン

糖とタンパク質が加熱されてできたAGEsは、
あらゆる食品に含まれています。

例えば、トーストホットケーキは、
「小麦粉(糖)+卵や牛乳(たんぱく質)」で
つくられていますが、表面の焼き色がついた部分が
糖化を起こしており、AGEsそのものなのです。
他にも、揚げ物炒め物焼物などは、
必然的にAGEsが多く含まれることになります。

食品から取り込まれたAGEsは、
消化の際にほとんどが分解されますが、
約7%は体内に蓄積されることが分かっています。

また、老化の速度が人それぞれ違うように、
AGEsの蓄積量も、人それぞれ異なります
バランスのいい食事、適度な運動など、
健康的な生活を送っている人は、年齢を重ねても、
体の中に蓄積されるAGEsが少ないと
されています。

逆に、偏った食生活、運動不足、
不規則な生活などが続くと、
AGEsの体内への蓄積が進んでしまいます。
そして、蓄積されたAGEsは、
なかなか除去することができません。
つまり、AGEsの蓄積量は「生活習慣の現れ」
とも言えるのです。

AGEsの蓄積で起こること

例えば、人の肌、骨、血管などの臓器には、
コラーゲンが含まれています。
コラーゲンは本来、バネのように柔軟な
架橋結合によって弾力性を保っています。

しかし、このコラーゲンの中に
AGEsが蓄積されていくと、
コラーゲン本来の働きが阻害されます。

コラーゲンの繊維がAGEsによって
余分な架橋結合を構成してしまうため、
柔軟性や弾力性が低下してしまうのです。

肌のシワやたるみ、くすみの原因に

AGEsの蓄積によるコラーゲンへの影響が
肌で起きると、シワやたるみの原因になります。

肌のハリは、真皮にあるコラーゲン繊維などの
繊維が、ベッドのスプリングのように編み目状に
張り巡らされることで、保たれています。

肌でのAGEsの蓄積は、
このスプリングの伸縮性を阻害してしまうのです。

また、トーストやホットケーキの例のように、
AGEsは種類によって褐色になります。
そのため、これが皮下に蓄積してくると、
くすみの原因にもなります。

骨粗しょう症の原因にも

さらに、骨のコラーゲンに蓄積すると
骨粗しょう症の原因となります。

骨の土台である骨基質は、
約90%がコラーゲンで形成されています。
そのため、AGEsによって余分な架橋結合が
構成されると、柔軟性が低下して硬くなり、
枯れ木のように折れやすくなってしまうのです。

軟骨にできれば関節痛に

そして、関節に蓄積すると
関節痛などの原因になり得ます。

関節の「軟骨」には、身体の動きからくる
衝撃を和らげる機能があり、
コラーゲンが多く含まれています。

AGEsによって軟骨の柔軟性が失われると、
衝撃を和らげる機能が弱まってしまい、
痛みが発生してしまうのです。

このように、AGEsの蓄積部位と蓄積量により、
「老化現象」と思われるさまざまな症状が
見られるようになるのです。

つまりAGEsは、
アンチエイジングの大きな敵と言えるでしょう。

また、AGEsは組織に蓄積することだけが
問題ではありません。
様々な受容体を介してシグナル伝達にも関与し、
慢性炎症などを引き起こす原因になります。

受容体を介した影響については、
別の機会にご紹介します。

AGEsの蓄積を防ぎ、アンチエイジングを

私たちの身体は、約60~70%が「水分」ですが、
残り約30%の内、約20%は「タンパク質」
構成されています。

そして、食事などで
糖からエネルギーを摂取して生活しているため、
AGEsを体内で全く発生させないということは、
非常に難しいのです。

食べ過ぎなどによって余剰となった糖分は、
「AGEs」の原因になると分かっていますので、
糖や炭水化物を過剰にとりすぎないことと、
血糖値を急激に上昇させないことなどが、
AGEs対策としては効果的であると
いわれています。

例えば、次のような生活習慣でしょうか。

  • 糖とタンパク質だけに偏らず、
    ビタミンや繊維の多い食事内容にする。
  • 満腹にせず、腹八分目にとどめる。
  • 食後に軽い運動をする。

AGEsをつくらない、体にためない生活は、
そのままアンチエイジングへと繋がるのです。

参考

  1. アークレイ からだサポート研究所
    生体内糖化反応(グリケーション)とAGEs
    http://ebn.arkray.co.jp/disciplines/glycation/ages-01/
  2. シャープマーケティングジャパン株式会社
    AGEsセンサ
    https://www.sharp-sbs.co.jp/ages-sensor/
  3. リバーシティークリニック 統合医療センター
    抗糖化コラム 糖化と骨
    https://rivercity-clinic.jp/imc/anti-glycation/column_28/
  4. リバーシティークリニック 統合医療センター
    抗糖化コラム 糖化と美肌
    https://rivercity-clinic.jp/imc/anti-glycation/column_07/
  5. 株式会社エバーライフ
    年齢研究所 糖化のメカニズム
    http://aging-lab.jp/mechanism/saccharification.html