アンチエイジング診療を標榜する
医院に限ったことではありませんが、
医院を開業すると
勤務医のときの待遇は
いっさい受けられなくなりますね。

特に、引退後の準備は
勤務医から開業医になった場合の
大きな課題でしょう。

現在は勤務医の場合でも
定年後の準備は楽だといえませんが、
それでも定年の際に
かなりの退職金を受け取れますね。

また、勤務医は厚生年金や共済年金に
加入するのがふつうです。

しかし開業医の道を選ぶと、
何も用意しない限り
仕事を辞めたときに
まとまったお金が入りません。

年金も国民年金となると、
残念ながら支給額が
限られてしまいます。

さて、たった今「何も用意しない限り……」
と書きましたが、
退職金や年金の代わりを
果たしてくれる制度なら
見つけることは簡単です。

今回のテーマである「小規模企業共済」
その代表格と呼べるでしょう。

この制度を利用すると、
引退時にお金を受け取れる上に
かなりの節税効果まで期待できます。

「小規模企業共済」とは?

これは「中小企業基盤整備機構」
と呼ばれる独立行政法人が
運用している共済制度です。

わかりやすく書くと、
「この共済に加入して、
将来に備えて毎月コツコツと
お金を積み立てる」
わけですね。

この共済は医療機関の経営者も
幅広く受け入れています。

小規模な医院や年数の浅い医院の場合、
大病院・医療法人等と異なり
退職金を用意する財源に
恵まれていないのがふつうです。
そこでこの制度を使えば、
その準備が可能となります。

「小規模企業共済」で期待できるメリットとは?

1.退職金代わりまたは年金代わりとなる共済金が支給される

この制度では、
条件をきちんとクリアすれば、
積み立てた掛け金に利子が上乗せされて
払い戻されます。

毎月の掛け金が少な目でも、
長期にわたって積み立てれば?
勤務医の退職金に匹敵する
金額になる可能性はおおいにあります。

そして積み立てた掛け金を、
退職金目的で使っても
年金で使ってもかまいません。

前者の目的で使いたいなら一括払いを、
後者の目的で使いたいなら分割払いを
選択すればOKです。
また、一括払いと分割払いの併用も可能です。

国民年金は現在、満額が支給されても
年間で80万円に満たないですね。

したがって国民年金と、この共済金を
合わせて老後の生活資金にするという手は
とても有効です。

2.積立金がそのまま節税の対象となる

これも大きなメリットでしょう。
「小規模企業共済等掛金控除」という名前で
すっかり有名になりましたが、
掛け金全額が所得税の控除対象になるのです。

毎月の掛け金は1,000~70,000円までの
中から決められますし、
途中で支払額を変えることも可能です。

また月払いでなくてもかまいません。
半年分、または1年分一度に払ってもOK。
融通が利く制度です。

さらにもう1点補足しますと、
引退後に積み立てたお金を
一括で受け取る場合も
分割で受け取る場合も、
税金面ではかなり有利になります
(一括払いを選ぶと「退職所得」、
分割払いを選ぶと「公的年金等に係る雑所得」
という扱いとなるため)。

3.資金確保の手段を提供してくれる

小規模共済は、加入者のために
独特の貸付制度を用意しています
(それまでに積み立てたお金の
範囲内で借りられます)。

担保や保証人が不要だったり
自然災害のときに好条件で
貸し付けてくれたりと、
加入者を優遇する仕組みが魅力的です。

「小規模企業共済」の注意点とは?

1.医療法人は加入できない

あくまでもこの制度は、
中小企業の経営者や
個人事業主等のためにあります。

このため医療法人の役員や理事長は
加入できません。
小規模企業共済加入後に
法人化したくなったら、
解約することになります。

2.加入の際に細かな条件を課される

たとえば、「常時使用するスタッフが5名以下」
といった条件があります。

なお、共済加入後に正社員が6名以上に増えても、
その時点で解約を要求されることはありません。
あくまでも加入時の状況がポイントです。

言い換えますと医院の規模が小さくて
正規雇用のスタッフが少ないうちに
加入する必要があるわけです。

3.途中で解約すると元本割れのリスクがある

この共済は20年経つ前に解約すると、
戻ってくるお金は
払い込んだお金より少額になります。

よって加入するときに、
長期的な視野でプランを
立てることが推奨されます。

途中で辞めたくなったときは、
損をせずに済むやり方を
慎重に探し出すべきでしょう。

たとえば、20年未満で法人化すると決めたときは、
元本割れで損する額を埋め合わせできる方法を
検討する必要があるでしょう。

いずれにしても、税理士のような
税制や資金繰りの専門家に
相談することが大事です。

小規模企業共済は条件が合うなら老後の備えと節税の両立が可能です

自由診療を追求する医院の
規模もケースバイケース。

すでにかなりの正社員を
抱えている医院や
法人化を狙っている医院に
この制度は不向きですが、
もしチャンスがあるなら
本格的に導入方法を
検討してはいかがでしょうか。

わからないことが多ければ、
まずは顧問税理士に相談しながら、
節税効果が高くなる払い方や
引退後の生活資金を確保できる払い方を
検討していくとよいでしょう。