食事で当たり前に摂取をしてしまう
糖とタンパク質から作られて、
美容と健康に様々な影響をおよぼす、
AGEs(エージーイー)。

これまで3回に亘って、

  • AGEsとはどんなものなのか
  • AGEsを下げるにはどんな方法があるのか
  • AGEs抑制に効果的な食品の具体例

についてご紹介してきました。

では、そもそも自分の身体に
AGEsがどれくらいあると思いますか?

そして、もし下げる方法を実践したら
どれくらいAGEsが下がったのか、
知りたくないですか?

AGEsがおよぼす様々な影響は、
急性的なものではありません。

じわりじわりと身体に変化が起きるため、
蓄積レベルが高くてもなかなか実感できず、
改善をしたとしても同じくじわりじわりで、
すぐに実感ができなかったりします。

そんなときに役に立つのが検査です。

検査により自身のAGEs蓄積レベルを
客観的に実感してもらうことで、
治療や生活習慣の改善の必要性を実感でき、
先生やスタッフの話の説得力が増し、
継続して来院するモチベーションに
なっていきます。

今回は、主なAGEs測定法のメリットと
デメリットについて、
ご紹介をさせていただきます。

手軽に痛みなくチェック! 蛍光測定法

以前の記事で、AGEsとは、
タンパク質のアミノ基と糖質が反応して、
最終的にできる様々な物質の総称
ご紹介しました。

このAGEsの一部は蛍光性を持っています。
そこで、光を当てて皮下蛍光を測定することで、
AGEsの蓄積レベルを見る方法があります。

メリット

・非侵襲測定

この方法の最大の特長は、
痛みがなく、簡単に測定できることです。
やはり患者は採血を嫌がるもの。
非侵襲であれば気軽に測定してもらえるので、
クリニックの看板にもなり得ます。

・ランニングコスト不要

測定のたびに必要な専用試薬などもないため、
ランニングコストが掛からないことも
大きな魅力です。
検査料金をいくらに設定しても
プラスになるだけです。

デメリット

・データに影響する要因が多い

非侵襲測定法の課題は、
様々な影響でデータが変動しやすいことです。
光を当てて皮下蛍光を測定しているので、
肌の色調の影響を受ける可能性があります。
また、測定部位がズレると測定値に影響する
可能性があります。

・直接AGEsを測定していない

非侵襲測定では、蛍光性のAGEsによる
皮下蛍光を測定していますので、
非蛍光性のAGEsは測定していません。
また、他の蛍光性物質の影響を受ける
恐れがあります。
しかし、血中AGEs量と非侵襲AGEs測定は
相関しているようなので、
測定結果は信頼できそうです。*1
なお、血漿中のAGEs量と蛍光値は相関すると
報告されています。*2

(非侵襲測定器にご興味のある方はコチラ

特定のAGEsをダイレクトに測定!

AGEsは、タンパク質と糖質が反応して、
最終的にできる様々な物質の総称です。

すでに100種類以上あることがわかっている
AGEsですが、そのいくつかは直接測定する
方法が開発されています。

直接測定ができるAGEsの例

・CML(Carboxy Methyl Lysine)
AGEsの代表格で多くの研究報告あり。
AGEsの中では比較的毒性が低いとの報告や、
糖質でなく脂質に由来する成分との報告もある。

・CMA(Carboxy Methyl Arginine)
コラーゲンの糖化により生成されるAGEs。
コラーゲンの糖化度を示す指標として期待される。

・ペントシジン
腎症のマーカーとして診療報酬が算定できる
唯一のAGEs。
骨質のマーカーとしても注目されている。*3

・TAGE(Toxic AGEs)
AGEsの中でも毒性の高いAGEsであり、
グリセルアルデヒドからできるAGEs群である
AGE-2はAGEs受容体(RAGE)を刺激して
高い生物作用を示すとされている。*4

・MG-H1
AGEsの中でもひときわ血中濃度が高く、
近年多くの研究で測定されているAGEs。*5

メリット

・特定のAGEs濃度が調べられる

調べたい種類のAGEs量を直接測定できるので、
特定のAGEsと臨床症状との関連が明確にしやすい
利点があります。
また、非侵襲測定と異なり、『mg』などの
明確な単位で測定値が表せるのもポイントです。

デメリット

・即時検査ができない

直接測定法の大きな課題は、
専用設備や技術が必要な段階であり、
手軽に院内で測定できる方法がないことです。
したがって、現状では検査センターもしくは
専門の検査機関に依頼する必要があります。
今後の測定技術の進展が待たれるところです。

・侵襲が必要

ペントシジンは尿中の測定も行われていますが、
多くの項目は採血などの侵襲が必要です。

診療では非侵襲 直接測定は研究 でも将来は?

今のところ、特定のAGEsを直接測定するには
外部の検査機関に頼るしかなく、
また、侵襲性もあることから、クリニックでは
非侵襲測定の方が使いやすそうです。
血中AGEsとの相関性もあるようですので、
AGEs蓄積レベルの評価は十分できるでしょう。

しかし、AGEsはたくさんの種類がありますので、
どのAGEsがどの疾病・症状と関連しているのか、
そしてそのAGEsはどうやって増減するのかは、
やはり重要なポイントといえます。

現在も多くの研究者の努力によって、
ベールに隠されたAGEsの情報が少しずつ
紐解かれています。

それに伴い、測定方法も進化していますので、
いずれは特定のAGEsがクリニックでその場で
測定されるようになるかもしれませんね。

参考

  1. AGEsセンサ シャープライフサイエンス株式会社
    https://www.slsjp.co.jp/ages
  2. Determination of Advanced Glycation End Products
    in Serum by Fluorescence Spectroscopy
    and Competitive ELISA
    Eur J Clin Chem Clin Biochem 1997; 35(9):669-677
    https://www.slsjp.co.jp/ages
  3. なぜ高い骨密度でも骨折するのか?
    歯科薬物療法, 32 巻 (2013) 3 号 p. 109-121
  4. Toxic advanced glycation end-products:
    TAGE の多様な疾患への関与
    日薬理誌(Folia Pharmacol. Jpn.) 139 ,193~197(2012)
  5. Quantitative screening of advanced glycation endproducts
    in cellular and extracellular proteins by
    tandem mass spectrometry
    Biochem. J. (2003) 375, 581–592